ハンターとしての資質

夜、迷い込んだ森の中で、道の先にヘッドライトで照らし出された、立ちのぼる炎のように立派な角を持った雄鹿が、こちらを悠然と眺めるシルエットを見たことがある。

距離にすればきっと50メートルほどはあっただろうか。しかし、その時僕は、完全に彼と目があってしまった気がして、というよりも、見据えられた気がして、身がすくむ思いがした。

とにかく、その彼の姿は、とてつもなく神々しかった。

ハンターの知り合いを持つ知り合い(遠い!)から聞いた話だが、猟に出かけるのは体力的にも精神的にも万全の時でないとダメだそうだ。

彼はひとりで森に入り、「これは」と思える獲物を長い時間かけて探し、見つけると確実に仕留められる位置・距離に入るまで追い続け、仕留めたら手早く血抜きをして解体し、それをたったひとりで森の外へ運びださなければならない。

体力的にきついのはもちろんだが、森に入ってから出てくるまで、自分が獲物よりも上の存在であるという気持ちを保ち続ける精神力が重要なのだそうだ。

その話を聞いて、あの森で見た雄鹿の神々しい姿を思い出し、深く大きくうなずいた。


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