9年前まで大阪の建築設計事務所に勤めていた。可もなく不可もなく、それなりに楽しくはやっていたけれど、そのままそこに勤めていてはいけない気がして、でもどうすればいいのかわからずにいた。
酒鬼薔薇の事件や宅間守の附属池田小事件があったりもして、社会全体が鬱屈し、閉塞感に包まれていた。そのころに出会ったのがこの本だった。
アマゾンの商品説明欄にあるあらすじはこんな感じ。
パキスタンで地雷処理に従事する16歳の日本人少年「ナマムギ」の存在を引き金にして、日本の中学生80万人がいっせいに不登校を始める。彼らのネットワーク「あすなろ」は、ベルギーのニュース配信会社と組んで巨額の資金を手にし、国際金融資本と闘い、やがて北海道で地域通貨を発行するまでに成長していく。
読み進んでいくと、そのとき僕がやるべきことのヒントが書かれているような気がした。そして、こんな衝撃的なフレーズをみつけた。
この国には何でもある。でも、希望だけがない。
僕が感じていた得体のしれないモヤモヤした気分をを具現化してくれたような気がした。
彼ら「あすなろ」は、独立国家的なものを作るのだけれど、その候補地として沖縄と北海道が挙がった。本州・四国・九州では、彼らの「気分」が変わらないという判断からだった。日本社会に深く根づいた「利権」や「既得権」の影響が比較的少ないと考えていた。
妙に納得した僕は「沖縄か北海道に移住するしかない」と、雷に打たれたように決断してしまった。しかし北海道へは行ったことがなかった。沖縄のほうは、その数年前に石垣島を中心とした八重山諸島へ、3泊4日ほどの旅行で訪れていて、とても良い印象を持っていた。
次にハローワークのインターネット版でどんな求人があるのか調べてみた。移住したら少なくとも半年以内くらいで新しい仕事に就いて家族分の食い扶持を稼がなければならないのだ。石垣島は絶望的だった。沖縄本島ならなんとかなりそうだったので、家族旅行も兼ねて視察に行ってみることにした。石垣島で受けた印象とはちょっと違っていた。米軍の存在感が想像以上に大きくて、その影響が沖縄本島全体の社会や文化に色濃く反映されている印象だった。 沖縄への移住はあきらめることにした。
次に北海道への移住を検討した。札幌はなにか違うような気がした。第2の都市として旭川を調べてみると、再就職は問題なくできそうだった。家内がネットで移住情報を調べていると、旭川郊外の田園地域で、美瑛や富良野などの景色の良い場所に隣接したところに一軒家の貸家を見つけた。不動産屋と連絡を取り、その家を見に行った。富良野のホテルに泊まるスキーのパックツアー(これが一番安かった)に参加して、スキーはまったくせずに、その家だけを見に行ったような感じだった。それで決めた。
で、いま旭川に住んで8年目になる。
僕にとってこの本は、そういう本だ。
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